ひろせ日記
『相続土地国庫帰属制度』と『相続放棄』どっちがいいの?
香川県高松市のひろせ司法書士事務所です。
先日、全日不動産協会香川県本部様の会員向け研修にて『相続土地国庫帰属制度』に関する講義をさせていただきました。
実際に引き取ってもらえる土地の条件が厳しいこともあり、不動産業界の方からは、「お金かけてまで利用する人がいるのか?」とか「使えない制度なんじゃないの?」と厳しい声が多かった印象です。
でも、私の方に相談に来られる方とお話をしていると「将来、子供たちに負担をかけたくないから費用がかかっても国庫に帰属させたい。」「今土地の管理にかかっている費用を考えると負担金を払ってでも国に引き取ってほしい」という声が多いので、その人の置かれている状況と、制度への理解によるのかな。と思います。
さて、前置きが長くなってしまいましたが本日は『相続土地国庫帰属制度』と『相続放棄』の違いについて。
土地に関する権利を放棄するという点では相続土地国庫帰属制度と相続放棄は似ていますが中身は大きく異なります。
目次
1.相続放棄の特徴
2.相続土地国庫帰属制度の特徴
3.相続放棄と相続土地国庫帰属制度の違い
1.相続放棄の特徴
(1)制度概要
相続放棄は、被相続人(亡くなった方)の財産一切を承継しないという制度です。
相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。(民法939条)
プラスの財産もマイナスの財産も含めて、全財産を放棄することになるので、特定の財産を選んで放棄することはできません。
(2)手続きが簡単
相続放棄の手続きは、申述書を家庭裁判所に提出して行います。
相続開始後3か月以内であれば、手続きも割と簡単で、期間も一月ほどで完了します。
(3)期限
相続放棄の申述には自身が相続人になったことを知ってから3か月以内という期限があります。
(4)費用が安い
費用も実費を含めても5万円程度でしょう。
ひろせ司法書士事務所に相続放棄をご依頼いただいた場合の費用
2.相続土地国庫帰属制度の特徴
(1)制度概要
相続土地国庫帰属制度とは、相続(又は遺贈)で取得した土地を、一定の負担金を支払うことで手放すことができる制度で、令和5年4月27日から施行されます。手放した土地は国庫に帰属し、以後国が管理、処分します。
(2)手続きが複雑
相続土地国庫帰属制度の申請についての難易度は高めです。(まだやったことありませんが…)
また、引き取ってもらえる土地の要件も厳しめです。対象にならない土地も多くあります。
申請してから国庫帰属まで半年から1年程度が想定されています。
(3)申請に期限がない
相続開始後いつまでに申請しないといけないといった期限はありません。
また、制度開始以前に相続した土地も対象です。
(4)費用は高め
費用はそれなりにかかります。
まず、10年分の管理費用として「負担金」納めますが、これが高い。
土地の種類などにもよりますが、20万円~数百万円を国に納める必要があります。
その他に、「審査手数料」と申請手続きを専門家に依頼するとその報酬が発生します。
「草刈りなどで毎年それなりに管理費用がかかっている郊外の農地」なんかは相続土地国庫帰属制度を利用するメリットが大きいんじゃないかなと思っています。
3.相続放棄と相続土地国庫帰属制度の違い
相続放棄 | 相続土地国庫帰属制度 | |
対象 | 全財産 | 特定の土地 |
提出先 | 家庭裁判所 | 法務局の本局 |
手続きの複雑さ | 容易・短期間で完了 | 複雑・長期間かかる |
費用 | 低額 | 高額 |
期限 | 3か月以内 | なし(過去の相続もOK) |
いかがでしたか?
土地の問題は相続放棄と相続土地国庫帰属制度の2択ではありません。
対象となるその土地の問題だけでなく、相続全体や相続した後の子供たちの将来のことなども考えてどのような手続きをとるべきなのか検討したいですね。
相続土地国庫帰属制度は令和5年4月27日から始まります。
気になる方はひろせ司法書士事務所にご相談ください。
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